補助金って…

先日、IT導入補助金の申請を行った。仕事で使う構造系のソフトを購入したいためだ。そのソフト販売会社がその補助金の指南を行っていたので、その指導に基づいて申請書を準備した。何度もやり取りを重ね、そんな内容まで考えて記載する必要があるんだろうか、と無駄を感じつつも、10何万の内、数万返ってくるのだから仕方ないかと考えつつ、提出した。そして、少し前にその申請結果が返ってきたが、「申請不採択」。申請の内容がそれほど特殊ではなく、ただただ労力がかかるだけの内容だったため、事務局は何を見て判断するんだろうか、ぐらいに考えていたが、まさか不採択になるとは想像していなかった。

その後、そのソフト販売会社から不採択で残念でした、のメールが来たが、その中で残念賞として割り引いてソフトを販売します、とのこと。それを利用して購入したが、ほぼ補助金をもらったと同じぐらいの価格で購入できた。IT導入補助金の申請を時間と労力をかけて行っていたのは一体何だったんだろうかと複雑な気持ちになった。また、採択結果が公表されていたが、採択されていたのはほとんどが会社で個人はほんの一握りだった。会社の規模に寄るが、この補助金の手間をかけて採択された会社からしても雀の涙程度のお金をもらって費用対効果は合っているんだろうかとも疑問に思った。

設計の仕事で振り返ると福祉系の施設は補助金が絡むことがほとんどだ。そして、これも散々、時間と労力をかけて申請を行っても、ほんの一握りの事例でしか、補助金が採択になったことがない。また、主に行政の各部署とやり取りするが、ちゃんとした事実を目の当たりにした訳ではないが、地元、癒着、行政縦割り、政治、既定路線、出来レース、という単語が思い浮かぶようなやり取りの感覚があり、「補助金」というものは信用できないイメージがある。実際、微々たる額ではあるが、今回初めて自身のために補助金申請を行ったが、やはり後味の悪さが残った。今後、自分自身のために補助金申請を行うことはないだろう。その時間と労力を使って仕事なり節税なりした方がよっぽど費用対効果が良いことは身をもって勉強したという感じだ。

補助金に関してあれこれ考えたり調べていたら、ある法則に行き着いた。
「パーキンソンの法則」である。

第一法則:仕事の量は、完成のために与えられた時間を満たすまで膨張する

第二法則:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する

日本の行政がパーキンソンの法則を前向きに適用すればもっとより良い社会になるだろう。
そんな日が来ないことも分かっているが、諦めたらそこで終わり。私が私のできることをしっかりやっていこう。

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現場確認と打合せ

建築主がかなり忙しい方で現場を見たいとなっても日時がなかなか合わない。私の方は別個で定期的に現場を訪れているので、今後は一緒に日時を合わせて現場確認をしようということになった。

現場は下地工事がおおよそ終わり、仕上げ工事に差し掛かっている状態。
どんな現場を訪れても毎回思うが、現場状況を確認しながら、頭の隅では、打合せを行い、何度も検討の上で決めた計画だとしてもその図面に記載のある寸法で本当に良かったのか、その仕様で良かったのか、他の選択肢の可能性はないのか、等は頭の中を過ぎる。正解というものは元々ないし、図面を作成する中で何度も検討してきたからきっとそれが妥当だったと思うが、考え出すときりがないぐらいに考えることもある。また、現場が始まると設計者が現場監理をするが、それはあくまで図面通りに作られていっているかの確認しかできない。その計画内容が正解なのかは誰も分からない。

そして、設計という仕事は建築主の言いなりにもなれる。施工者の言いなりにもなれる。だが、そうなったらおしまいだとも思っている。設計者のエゴを押し通すのも違うと思うが、設計者のより良い建物へしようとする粘り強い姿勢を失くすことも違うと思う。これもどちらが正解という訳でもなく、その時の建築主や施工者との関係性によって左右される。

私個人の思いとしては、私が設計する建物はある意味、自分の分身だと考えている。建物が建ってしまえば同じ場所に何十年とそこに在り続ける。その建物の所有者は建築主だとしても、その計画に携わった設計者がその建物になんの感情も湧かないまま、なんの思い入れもないまま計画されてその場所に在り続けるのは可哀そうだとも思う。

現場が始まってしまえば設計者にできることはかなり限られてしまうが、それでも建築主と現場を一緒に訪れたり、一緒に内容を再確認したりする中でその建物への思いが少しでも伝わればと考えながら、今後も現場へ足を運ぶ。

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所持品検査、違法収集証拠排除法則、違法性の承継、強制処分法定主義(2024司法試験-刑事訴訟法)

〔設問1〕鑑定書の証拠能力について

・職務質問
:警察官は異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、
①何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者、または、
②既に行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者、
を停止させて質問することができる。(警職法2Ⅰ)

・所持品検査
:明文の規定はないが、所持品検査は口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげる上で必要性、有効性の認められる行為であるから、任意手段である職務質問の付随行為として許容される場合もあると解するのが相当である。そして、任意手段である職務質問の付随行為として許容されるのであるから、相手方の承諾を得て行うのが原則である。それが捜索に該当するか、または強制にわたる場合には違法とされる。

・違法収集証拠排除法則
:証拠の収集の手続・手段に違法がある場合には、当該証拠の証拠能力は否定されなければならない
↓(排除法則の理論的根拠)
①司法の無瑕性論
:裁判所は違法収集証拠といういわば「汚れた証拠」を手にすることで自らの手を汚してはならない。
違法収集証拠を裁判手続で使用して処罰を行うならば、裁判所に対する国民の信頼が損なわれ司法不信をもたらす。それゆえそのような証拠は審理から排除されるべき
②違法捜査抑止論
:違法な手段によって収集された証拠の使用を禁止することで、将来において同様の違法な証拠収集活動が行われるのを抑止すべき
③適正手続論
:被告人の権利利益を違法に侵害する手段によって獲得された証拠を用いて当該被告人を処罰することはそれ自体、正義に反するものであり、適正な手続の保障を害する
↓(排除法則の実定法上の根拠)
違法収集証拠の排除を明示的に定めた法規定はない。証拠収集手続の違法が明白かつ著しい場合等には、獲得された証拠を公判で使用することによって手続全体が適正を欠くものになるため、憲法31条(適正手続の保障)等によって証拠排除が要請される
↓(排除の基準)
①違法の程度、②違法行為と当該証拠との間の因果性の程度、③同種の違法行為が行われる可能性・頻度、④当該証拠の重要性、⑤事件の重大性、等の諸般の事情を総合衡量して、排除が必要でありかつ相当であるといえる場合に証拠排除すべき(相対的排除論)

・違法性の承継論
:先行する違法な手続と最終的に得られた証拠との関係を論じるもの
・毒樹の果実論
:違法に収集された証拠がある場合にその証拠と最終的に得られた証拠との関係を論じるもの

上記2つの論は説明の仕方の違いにすぎない。
端的に違法な手続と当該証拠との間の「因果性(関連性)」の有無、程度の問題として論じれば足りる

〔設問2〕ビデオ撮影の適法性について

・検証
:一定の場所、物、人の身体につき、その存在や形状、状態、性質等と五官の作用(視覚、聴覚、嗅覚等の五感)によって認識する行為を強制的に行う処分
ex)カメラで対象を撮影する

・強制処分法定主義(197Ⅰ但書)
:捜査目的を達成するために必要な行為であってもそれが強制の処分に当たる場合にはこの法律に特別の定のある場合でなければこれをすることができない
↓(趣旨)
「強制処分」とは「相手方の意思に反して行われ、その重要な権利利益に対する実質的な侵害ないし制約を伴う処分(重要権利利益侵害説)」と定義した上で、197条1項但書は憲法31条の考え方を受けて、捜査目的達成のためにこのような処分を行うことを捜査機関に許すか否かは国民自身がその代表で構成される国会を通じて意識的かつ明示的に選択すべき事柄である旨の規定である

・捜査比例の原則
:捜査は正当な目的を達成するために「必要」かつ「相当」な範囲で行わなければならない

参考文献
:LEGAL QUEST 刑事訴訟法〔第3版〕・宇藤崇、松田岳士、堀江慎司(有斐閣)
 刑事訴訟法判例百選〔第11版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2024・法学セミナー編集部(日本評論社)

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自分自身のための格言

10年前に学生の頃からしたいと思っていた自身の設計事務所を開業し、建築と法律のプロフェッショナルになるべく、日々いろいろと考え続けてきて、気になったことは手帳に書き綴ってきた。手帳に書いては消してを繰り返して取捨選択してきて、未だに残っている選りすぐりの自分へ向けた格言。

・トラブルを起こす人と関わると自分もトラブルに巻き込まれる

・継続こそ力なり

・手を抜かないと心に決めること

・2:8パレートの法則は実際にある

・プロジェクトに見合う対価をもらってこそ、本当のプロフェッショナル

・目の前の仕事を精一杯行うこと、先々を考えて手を止めない

・期限は具体的に決めること

・頭に空白を作るようにすること。予定を詰め込みすぎない

・同じ日本人だからといって当たり前に日本語が通じると思うな

・仕事を時給で考えた時にプレゼン、雑務にそこまで時間はかけられない

・優れた作品を作り続けること。それがすべきことであり、できることの全てである

・物事をイメージで捉えてはいけない。事実だけが本当のこと。人も建築も。

・最善を尽くす

・間接の努力を地道に

・自分を超えていけ

・計画も作業もそれが楽しいかどうかを考える。楽しいことをすべき

・誰でもできることをやっても価値は生まれない。あなたにしかできないことをすべき

・「人」ってそんなもんだ。そんなことを思う状況になるぐらいなら優秀な人を探せ

・困難な状況と感じた時、そこからがスタートという気持ちで

・自分しか証人のいない試練

・人のことは信用すべき。ただ、信頼はしてはいけない。

・全体で捉えにくいものも細かく分割すれば把握できる

・少しずつで良いから、未来の自分にバトンを渡すように進め

・何事もしっかり考えるべきだが、全てをできるだけシンプルに収斂していくこと

・優先順位の高いものから手を付ける。「メイン」をメインに進めて、サブで気分転換

・日中に集中するためにしっかり寝ること


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強盗罪、窃盗罪、正当防衛、共同正犯(2024司法試験-刑法)

〔設問1-1〕甲の罪責

・傷害罪(204)
:人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
・「傷害」
:人の生理機能の侵害

・1項強盗罪(236Ⅰ)
:暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は強盗の罪とし、5年以上の有期拘禁刑
・客体
:他人の財物(他人が所有権を有する財物)
・「暴行又は脅迫」
:被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のもの
(本件の場合、反抗抑圧後に奪取意思を抱いており、新たな暴行脅迫が必要であるが、反抗抑圧状態が維持継続するものであれば足りる)
・「強取」
:暴行・脅迫により被害者などの反抗を抑圧して財物を奪取すること

・併合罪(45)
:確定裁判を経ていない2個以上の罪

〔設問1-2〕乙の罪責

・2項強盗罪(236Ⅱ)
:前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も同項と同様とする
・「財産上…の利益」
:債権など有体物以外の財産的権利・利益
↓しかし、
移転可能性に疑問のある情報やサービスなどを広く含めることができるかは問題
↓そこで、
移転を観念しうるような対価を支払うべき有償のサービスなどの財産的利益に限り、客体となりうると解する(ex.カードの暗証番号等)

・未遂(43)
:構成要件該当事実の実現に着手したが、それを成し遂げるに至っていない段階
・実行の着手時期(実質的客観説)
:既遂犯の構成要件的結果を生じさせる危険性が認められる行為への着手の時点で実行の着手が認められる

実行行為の危険性が現実化すると因果関係が肯定されて既遂となる

・窃盗罪(235)
:他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
・「財物」
:有体物(空間の一部を占めて有形的存在を持つ、固体・液体・気体)に限られる。(有体性説)(通説)
・財産的価値
:客観的な交換価値はなくとも、主観的な使用価値が認められれば足りる
・刑法における占有
:財物に対する事実上の支配(代理占有、占有改定等は認められない)
・占有の存否
:財物に対する支配(占有の事実)という客観的要件と、支配意思(占有の意思)という主観的要件を総合して社会通念に従い判断される
※①取得した財物に他人の占有が存在したか否か
:窃盗罪か、遺失物横領罪か
②取得した財物の占有が他人なのか、自己なのか
:窃盗罪か、横領罪か
・客体
:他人の財物(他人が所有権を有する財物)

現在の判例においては、占有侵害の存在により窃盗罪の構成要件該当性を肯定し(占有説)、行為者の権利行使の側面は違法性阻却において考慮する立場(独立説)が採られている
・「窃取」
:他人が占有する財物を占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転させること
・既遂時期
:行為者又は第三者が財物の占有を取得したとき
・不法領得の意思
:権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い、利用・処分する意思(判例・通説)

・不能犯
:犯罪を遂行しようとする者の行為が外形的には実行の着手の段階に至っても既遂犯の構成要件的結果を惹起することが不可能であるため、未遂犯の成立が否定されて不可罰とされる場合
↓(判断基準)
一般人が行為の時点で認識可能な事実に基づいて、結果惹起の可能性・蓋然性を判断(具体的危険説)

〔設問2〕(1)丙に正当防衛が成立することの証明

・暴行罪(208)
:暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の拘禁刑、若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
・「暴行」
:人に対する物理力の行使

・正当防衛(36Ⅰ)
:急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

「刑法36条は、急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることができないときに、侵害を排除するための私人による対抗行為を例外的に許容したものである。」(最判H29.4.26 Ⅰ-23)
・「急迫不正の侵害」
:違法な侵害が現に存在し、又は間近に押し迫っていること

「侵害を予期していたとしても侵害の急迫性は直ちに失われるものではない。」(最判S46.11.16)

「その機会を利用して積極的に相手に加害行為をする意思(積極的加害意思)で侵害に臨んだときには侵害の急迫性の要件は充たされないとしている。」(最判S52.7.21)
・「防衛するため」
:侵害に対応する意思としての防衛の意思が必要
・「やむを得ずにした行為」
:防衛行為の正当性

〔設問2〕(2)①甲の罪責

・幇助(62Ⅰ)
:正犯に物的・精神的な援助・支援を与えることによりその実行行為の遂行を促進し、さらには構成要件該当事実の惹起を促進すること

〔設問2〕(2)②丁の罪責

・共同正犯(60)
:「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」

謀議・共謀に基づいて犯罪の実行が行われた場合には謀議関与者について実行行為の分担の有無を問わず、共同正犯としての罪責が問われることになる。

「共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否は、共同正犯者の各人につきそれぞれの要件を満たすかどうかを検討して決するべき」(最判H4.6.5 Ⅰ-90)

参考文献
:刑法〔第4版〕・山口厚(有斐閣)
 刑法判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第8版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2024・法学セミナー編集部(日本評論社)

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