中間検査

先日、工事中の案件が上棟を終えた。
周囲は隣家が迫り、道路側も電線の束があって、クレーンでの作業が非常にしにくい条件だったが、苦労しながらも無事終えてくれた施工者に感謝したいと思う。

そして、それに引き続き、検査機関による中間検査を受けた。
基礎検査同様、特に指摘事項もなく、あっけないぐらいの検査だった。

経験上、どんな案件でもどこかで苦労する。例外はない。
工事中の検査で書面審査時に指摘されなかったことを指摘されてバタついたこともあれば、建築主との打合せがスムーズに行かなかったこともある。また、計画内容は決まったものの、工事金額となかなか折り合いが付かずに四苦八苦したこともある。

この案件は建築主との打合せはスムーズだった。
施工者とのやり取りも順調だった。
計画内容と金額の調整も多少の困難はあったが、他の案件に比べればかなり順調だった。
だが、設計作業と検査機関とのやり取りで通常の案件の2-3倍は時間と労力を使った。
そのため、私の法則からすれば工事中の現場で困ることがほぼない予定だが、今の所、その法則通りに進んでいる。

この案件は混構造だが、RC造の部分、木造の部分の全ての躯体工事が終わった。
今後は下地、仕上げと工事が進んでいくが、たとえ私の法則通りに進まないことがあったとしても死に物狂いで喰らいついて、なんとしてでも建築主に喜んでもらえる完成を迎えたいと思う。

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無権代理人の死亡、留置権、賃貸借、錯誤(2024司法試験-民法)

〔設問1〕(1)ア 請求1、AのCに対する土地所有権に基づく物権的返還請求

・物権的返還請求権
:物権を有する者に帰属すべき物を第三者が占有しているときに物権を根拠として、その第三者に対し、その物の占有の回復(物の引渡し)を求めることができる権利

・契約①:他人物賃貸借(559(561により債権的に有効))

・賃貸借(601)
:当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによってその効力を生ずる。
・賃貸人の義務
 1.賃借物を使用収益させる義務(601)
 2.修繕義務(606)
 3.賃借人の法益に対する保護義務
・賃借人の義務
 1.賃料支払義務(601、614)
 2.用法順守義務(616、594Ⅱ)
 3.賃借物保管義務(400、615)
 4.賃貸人の法益に対する保護義務

・相続の一般的効力(896)
「相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものはこの限りでない。」

・無権代理
:代理行為をした者がその法律行為について代理権を有していないか、または代理権を有しているが、授権された範囲を越えて代理行為をした場合。
↓効果
代理権を欠いた代理行為は本人に帰属効果しない。本人が追認すれば効果帰属する。(113)

・無権代理人が死亡して本人が相続した場合
:相続人である本人が「本人としての地位」に基づいて被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても信義則に反するものではない。(本人の無権代理人相続 最判S37.4.20 Ⅰ-35)

〔設問1〕(1)イ 請求1、CのBに対する損害賠償請求権を被担保債権とする土地の留置権の主張

・留置権(295)
「他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を有するときはその債権の弁済を受けるまでその物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときはこの限りでない。」
債権の弁済を心理的に強制することができる権利。
・留置権の成立要件
 1.留置権者が「他人の物」を占有していること。
 2.留置権者が物に関して生じた債権(被担保債権(ex.費用償還請求権、損害賠償請求権等)    を有すること。-被担保債権と物との牽連性
 3.留置権者の被担保債権が履行期にあること。
・留置権者の成立阻却事由
 1.占有が不法行為によって始まった場合(295Ⅱ)
 2.占有開始後の権限喪失

〔設問1〕(2)ア 請求2、DのAに対する賃料一部返還請求

・賃借物の一部が使用収益できなくなった場合にそれが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は使用収益できない部分の割合に応じて減額される。(611Ⅰ)
賃料の支払時期は特約等がない場合は後払い(614)
↓(原則)
そのため、前払いの賃料の一部減額はできない。
↓(修正)
しかし、611条1項の趣旨に照らせば類推適用により、賃借人が使用収益できなかった期間、部分に相当する賃料は減額され、既払いの賃料の返還請求ができる。

〔設問1〕(2)イ 請求3、DのAに対する修繕費用の償還請求

・原則:賃貸人に修繕義務(606Ⅰ)、賃借人に通知義務(615)

賃借人が修繕(607の2)
①賃借人から賃貸人に通知、又は賃貸人がその旨を知ったにも関わらず賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫の事情があるとき
↓急迫な事情はなく、DからAに対して通知していないため、問題となる。
607条の2の趣旨
:賃貸人が自ら修繕する機会を確保することにより、賃借人による過剰な必要費償還請求を制限することにある。
↓よって
Dの必要費償還請求(608)を認めつつも適正額を超えてしまった部分についてはDの通知義務(615)違反を原因とした債務不履行に基づく損害賠償請求との相殺。
↓以上より
DからAに対して、修繕費用の一部が償還請求として認められる。

〔設問2〕IのFに対する物権的返還請求
・錯誤
:表意者の認識しないところで表意者の主観と現実との間に食い違いがある場合
「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」にのみ、表意者はその意思表示を取り消すことができる。(95Ⅰ)
・表示行為の錯誤(95Ⅰ①)
:意思表示に対応する意思を欠く錯誤
・行為基礎事情の錯誤(95Ⅰ②)
:表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」(95Ⅱ)
(例外)
・表意者に重大な過失があるときは表意者は錯誤を理由として、意思表示を取り消すことができない。(95Ⅲ)
(例外の例外)※以下の場合、取り消すことができる。
①相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき(95Ⅲ①)
②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき(95Ⅲ②)
・錯誤による意思表示の取消しはこれをもって善意無過失の第三者(取消し前)に対抗することができない。(95Ⅳ)
・第三者
:錯誤に基づく契約当事者以外の者で錯誤に基づいて作出された法律関係につき、錯誤取消し前に新たに独立した法律上の利害関係を持つに至った者。

参考文献
:民法〔第3版〕・潮見佳男(有斐閣)
 民法判例百選Ⅰ〔第8版〕、民法判例百選Ⅱ〔第8版〕、民法判例百選Ⅲ〔第2版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2024・法学セミナー編集部(日本評論社)

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鉛筆

仕事や勉強に使う筆記用具として鉛筆をたまに使っている。今までもたくさんの鉛筆を使ってきたが、手元に鉛筆がまだ20本程度あるからだ。これら鉛筆は幼稚園や小学校の頃に誕生日会等でもらったプレゼントである。ミニマリストではないが、基本的に物は少なくをもっとうとしているので、多少使うかもと思うものでも捨ててしまうことが多いが、この鉛筆はなかなか捨てようとは思えなかった。

残りも少なくなってきた鉛筆

だが、小学校の頃は鉛筆を使っていたものの、その後の中学、高校、大学、社会人では鉛筆はあまり使うこともなく、シャープペンを使ってきたので、まだ鉛筆がたくさん残ることになった。だが、最近は法律の勉強が軌道に乗ってきたので、法律の勉強時には鉛筆を使うようにしているので、少しずつ減り始めてきた。それでもこの約40年保管してきた鉛筆を使い切るにはまだ数年かかるかもしれない。

手の腹の部分を黒くするのは小学校以来か、大学で製図を行っていた時ぐらいしかないが、それに心地よさを感じながら、約40年保管してきたこの鉛筆達の本分をしっかりと果たしてもらおうと思う。

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行政庁の処分、違法性の承継(2024司法試験-行政法)

〔設問1〕(1)本件事業計画変更認可の処分性

・行政事件訴訟法3条2項
:この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

・取消訴訟の訴訟要件
①処分性、②原告適格、③訴えの利益、④被告適格、⑤管轄裁判所、⑥不服申立前置、⑦出訴期間

・行政庁の処分
:公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているもの(最判S39.10.29)Ⅱ-143

最判S60.12.17は強制加入団体の設立行為を根拠に処分性を肯定。
↓しかし、
本件事業計画変更認可の処分性を肯定する根拠とならない。
↓そこで、
都市再開発法および下記参考判例から規範定立→あてはめ→結論

・土地区画整理事業計画(最大判H20.9.10)Ⅱ-147
:事業計画が決定されると、施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかにつき「一定の限度で具体的に予測することが可能」となり、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることにより、一定の規制(建築行為の制限等)を伴う土地区画整理事業の手続にしたがって換地処分を受けるべき地位に立たされ、その法的地位に直接的な影響が生ずるとして、事業計画決定に伴う法的効果は一般的・抽象的なものではないとする。
また、換地処分等を受ければその取消訴訟を提起できるとしつつ、そこで事業計画の違法の主張が認められたとしても、事情判決がされる可能性が相当程度あり、権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難く、事業計画の適否の争いにつき「実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性がある」としている。

〔設問1〕(2)本件事業計画変更認可の違法性

・都市再開発法、都市計画法から手続的違法、実体的違法の問題提起→規範定立→あてはめ→結論。
(試験時間内に個別法から一連の流れを導き出せるのか?)

〔設問2〕本件事業計画変更認可の違法性の主張の可否(違法性の承継の可否)

・違法性の承継
:先行処分の出訴期間経過後に後続処分の違法性を争おうとする場合に当該後続処分の前提とされた先行処分の違法性を主張することができるか、という問題。

後続処分において先行処分の違法性を主張することが遮断されないとすると違法性が後続行為に承継され、先行処分の公定力が実質的に否定されてしまうために問題。

伝統的学説としては、「先行処分と後行処分とが相結合して一つの効果の実現をめざし、これを完成するものである場合」に特別の規定のない限り違法性の承継を認め、「先行処分と後行処分とが相互に関連を有するとはいえ、それぞれ別個の効果を目的とするものである場合」にはこれを否定する。

・違法性の承継(最判H21.12.17)Ⅰ-81
:実体法上の目的・効果の同一性基準に加え、先行行為につき取消訴訟の排他性を認めることが原告の手続保障の面で十分か、違法性の承継を認めることが原告の権利利益救済の実効性に照らして必要かという、手続法的観点を加味。

参考文献
:行政法〔第6版〕・櫻井敬子 橋本博之(弘文堂)
 行政判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第8版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2024・法学セミナー編集部(日本評論社)

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職業選択の自由、表現の自由(2024司法試験-憲法)

1.犬猫販売業の免許制(規制①)(職業選択の自由)

・経済的自由権
:職業選択の自由、居住・移転の自由、財産権

・憲法22条1項
:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

・職業選択の自由
:自己の従事する職業を決定する自由+営業の自由(自己の選択した職業を遂行する自由)

・職業
:人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し、各人が自己のもつ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有するものである。(薬事法判決-最大判S50.4.30)

・厳格な合理性の基準
:裁判所が規制の必要性・合理性および「同じ目的を達成できる、より緩やかな規制手段」の有無を立法事実に基づいて審査。

・明白の原則
:立法府がその裁量権を逸脱し、当該規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲とする方法。

2.犬猫販売業の広告規制(規制②)(表現の自由)

・憲法21条1項
:集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

・表現の自由を支える価値
:個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的な価値(自己実現の価値)と言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主政に資する社会的な価値(自己統治の価値)

・二重の基準
:表現の自由を中心とする精神的自由を規制する立法の合憲性は経済的自由を規制する立法よりも、特に厳しい基準によって審査されなければならない。
↓根拠
①経済的自由は民主政の過程が正常に機能する限り、議会でこれを是正することが可能である。それに対して、精神的自由は民主政の過程そのものが傷つけられるために裁判所が積極的に介入する必要があるため。
②経済的自由の規制について審査する能力に乏しい裁判所としては、特に明白に違憲と認められない限り、立法府の判断を尊重する態度が望ましいため。

参考文献
:憲法〔第八版〕・芦部信喜(岩波書店)
 憲法判例百選Ⅰ〔第7版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2024・法学セミナー編集部(日本評論社)

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