違法収集証拠排除、不利益変更禁止の原則、反射効(2023司法試験-民事訴訟法)

〔設問1〕違法収集証拠排除の法的根拠・判断基準について

・証拠能力の制限

原則として、証拠能力に制限はない
⇔刑事訴訟法では伝聞証拠の排除(刑訴法320)等、証拠能力の制限が厳格に定められている
↓(例外)
①明文規定がある場合
ex)疎明の証拠方法は即時に取調べが可能なものに限られる(188)等
②証拠制限契約がある場合
③違法収集証拠

・違法収集証拠

民事訴訟法上、違法収集証拠の証拠能力に関する規定はない
↓しかし、
違法収集証拠を裁判所が事実認定の資料として用いることは訴訟における公正の原則や訴訟上の信義則を損なうことになる(2)
また、裁判所が違法行為を是認したとの誤解を与えかねず、ひいては違法行為を誘発するおそれも否定できない
↓そこで、
証拠収集行為において刑罰法規に抵触するなどのような重大な違法があり、これを証拠として許容することが違法な証拠収集行為抑制の見地からして相当でないと認められる場合には証拠能力を否定するべきと解される

〔設問2〕控訴時の相殺の扱いについて

・控訴裁判所は不服申立ての限度でのみ、第1審判決の取消しおよび変更をすることができる(304)

不利益変更禁止の原則
:相手方の控訴または附帯控訴がない限り、控訴人の不利に第1審判決の取消しまたは変更をすることはできない

・既判力の客体的範囲

既判力は「主文に包含するもの」に限って生じる(114Ⅰ)

判決理由中の判断については原則、既判力が生じない
↓(例外)
判決理由中の判断である相殺の抗弁に対する判断について既判力が生じる(114Ⅱ)

〔設問3〕保証人に対しての判決効

・既判力の主体的範囲(判決の相対効)
①前訴の当事者(115Ⅰ①)
②当事者が他人のために原告または被告となった場合のその他人(115Ⅰ②)
③当事者または訴訟担当における被担当者の口頭弁論終結後の承継人(115Ⅰ③)
④当事者、訴訟担当の被担当者またはこれらの者の口頭弁論終結後の承継人のために請求の目的物を所持する者(115Ⅰ④)

保証人は該当しない

・補助参加人(保証人等)
:当事者の一方の勝訴について法律上の利害関係を有し、その当事者を補助して訴訟追行するために参加する第三者

自ら固有の請求をもたず、判決の名宛人となることはない
↓(従属的地位)(被参加人に有利なことはできるが不利なことはできない)
①補助参加人は参加時の訴訟状態を承認しなければならない(45Ⅰ但書)
②補助参加人は訴訟自体を処分することはできない
③補助参加人は被参加人の行為と抵触する行為をすることはできない(45Ⅱ)
④補助参加人は被参加人に帰属する形成権を行使できない

参加的効力(被参加人と補助参加人の間で生じる)
:被参加人が敗訴した後、被参加人と補助参加人との間で訴訟となった場合、敗訴の原因となった認定について補助参加人はもはや争えなくなるということ
↓(例外)(以下、参加的効力は生じない)
①参加の時期が遅れたため、一定の訴訟行為をなすことができなかった場合(46①)
②被参加人の訴訟行為と抵触したため、補助参加人の訴訟行為が効力を生じなかった場合(46②)
③被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げた場合(46③)
④被参加人が参加人のすることのできない訴訟行為を故意または過失によってしなかった場合(46④)

・反射効
:判決が当事者に実体法上依存または従属する地位にある第三者との関係で反射的に有利または不利な効果が生じること
↓(否定説)
・法律上依存関係の存在を理由として既判力の拡張が認められるのは、口頭弁論終結後の承継人の場合に限られていること
・法律上既判力の拡張が認められていない以上は訴訟物ごとに十全な手続保障を与えなければならないとするのが現行法上の原則であること
・第三者の有利にのみ既判力を拡張することは敗訴当事者の敗訴の負担を一方的に増大させるものであり公平に反すること

参考文献
:LEGAL QUEST 民事訴訟法〔第4版〕・三木浩一、笠井正俊、垣内秀介、菱田雄郷(有斐閣)
 民事訴訟法判例百選〔第6版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2023・法学セミナー編集部(日本評論社)

田中洋平 について

大学で建築と法律を学びました。 大学卒業後は木造の戸建住宅やS造・RC造の事務所や福祉施設等の 様々な構造・用途の建築設計に携わりました。 また現在も、日々、建築と法律の勉強を続けています。 建築(モノ)と法律(ヒト)のプロフェッショナルとして 多様な知識・経験・考え方を通して、 依頼主が望み、満足し、価値を感じる、 一歩先の新たな価値観を提案します。
カテゴリー: 法律 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です