設計事務所を始める前からの思いとして、せっかくなら建築だけという限られた専門性だけでなく、建築と法律の両方のプロフェッショナルになりたい、という希望がある。
建築に関して、設計事務所を営む以上、設計の仕事をしっかり行うのは大前提として、私は意匠設計者だが構造や設備のことももっと深く知りたい。また、新建材や法律の改正内容等新しい情報も把握しておきたい。そして、RevitやTwinmotion等、設計力を高めることができるソフトもしっかりと習得したい。すぐには役立たなくても他の設計者の詳細図集や海外の建築事例にも目を通しておきたい。等など。だが、実際は目の前の仕事を進めるだけで時間が膨大にかかり、プラスアルファの自分の理想とする建築の知識を蓄える作業が進んでいない現実がある。
また、法律に関して、建築の編入試験で全国の大学を受け廻っていた時に面接時にほぼ100%、「設計の仕事をするにしても、せっかく法律を学んできたならいつかは法律も生かして欲しい」と面接する大学教授達からのアドバイスをもらったこともあり、会社員時代から細々と司法試験予備試験の勉強もしてきた。設計の仕事は帰りも遅いから終電近くで家に帰り、夜中の0時近くにマクドナルドに行って、2時ぐらいまで勉強をすることもあった。だが、そんな無理な生活は続く訳がなく、しばらく続けたものの、しばらく手つかずということを繰り返した。また、自身の設計事務所を始めてからも細々の法律の勉強は続けているが、数日連続で勉強したとしても、仕事が忙しくて数か月の間、法律の本を開くこともない、という三日坊主を繰り返しており、勉強しているレベルには達していない。
建築と法律のプロフェッショナルを目指してきたこの10年を一言で言うなら、時間との付き合い方にひたすら悩み続けた期間だったように思う。一日は24時間でそれは誰しも平等であり、その時間をどのように使おうとも誰かに何かを言われることもない。だらだらしたければそうすれば良いし、隙間時間も逃さずに詰めて詰めて時間を使うことでも良い。そして、時間に関わる本も数えきれないぐらいに購入した。タイパ、コスパ良く時間を使うにはどうすれば良いか。時間は有限なのだから詰め込みすぎな時間の使い方は間違っている。等など。夜の21時に寝て4時ぐらいから仕事したり、夜中の3時に寝て朝は普通に起きて一日をできるだけ長く使ったりもした。だが、結局、頑張ろうとすると、睡眠時間を削ることが多く、日中のパフォーマンスを考えるなら、これはなんとか避けたいと常日頃から考えていた。
そんな紆余曲折を経ながら、つい最近の1日の過ごし方は、1日を4時間ずつに切り分け、9-13時:建築、13-17時:建築、17-21時:食事・入浴、21-1時:法律、1-9時:睡眠等、という時間割りで過ごしていたが、日中に詰めて建築の仕事をしていたら、夜の法律の時間は疲れ果ててなかなか進まず、変わらず自分の意志の弱さを責めたりする日々が続いていた。
ふと今までの人生を振り返り、時間を有意義に過ごせていた時期を思い出すと、やはり大学受験の3回目の頃と編入試験を受けていた頃だ。どちらも精神的に追い詰められていたということもあるかもしれないし、すべきことは一つに限られていたからかもしれないが、最も基本的なこと、しっかり睡眠を取り、早寝早起きで日中はひたすらその時すべきこと(勉強する)に集中するという生活だった。7時頃には起き、午前中から夕方までカフェや図書館に籠ってひたすら勉強して、夜は早めに寝ていた。
そこで、その成功体験に倣い、午前中は法律の勉強、午後は設計の仕事と建築の勉強、夜は早めに寝るという生活を送ってみることにした。始めてまだ2週間程度だが、起きてから寝るまでほぼぶっ続けの勉強か作業なので、家に帰る頃にはどっと疲れもたまっている感じもあるが、少し前に作業時間を12時間に設定していた時よりも今の9時間に設定している方が確実にすべきこと、したいことがはかどっている。
建築と法律のプロフェッショナルになりたい、ということは言い換えるなら、人の2倍は頑張らなければならないとも言えるが、そのことを考えすぎて睡眠時間を削る生活を長く続けてきた。だが、結果、本人的には不完全燃焼感が強くあった。時間は有限で、睡眠時間を削っても日中のパフォーマンスを落としながらでは中途半端になるし、何より結局、効率が悪い。早寝早起きして日中に目一杯、有意義な時間を過ごすことで自分の望む生活、人生となるように頑張ってみたいと思う。