行政庁の処分、違法性の承継(2024司法試験-行政法)

〔設問1〕(1)本件事業計画変更認可の処分性

・行政事件訴訟法3条2項
:この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

・取消訴訟の訴訟要件
①処分性、②原告適格、③訴えの利益、④被告適格、⑤管轄裁判所、⑥不服申立前置、⑦出訴期間

・行政庁の処分
:公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているもの(最判S39.10.29)Ⅱ-143

最判S60.12.17は強制加入団体の設立行為を根拠に処分性を肯定。
↓しかし、
本件事業計画変更認可の処分性を肯定する根拠とならない。
↓そこで、
都市再開発法および下記参考判例から規範定立→あてはめ→結論

・土地区画整理事業計画(最大判H20.9.10)Ⅱ-147
:事業計画が決定されると、施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかにつき「一定の限度で具体的に予測することが可能」となり、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることにより、一定の規制(建築行為の制限等)を伴う土地区画整理事業の手続にしたがって換地処分を受けるべき地位に立たされ、その法的地位に直接的な影響が生ずるとして、事業計画決定に伴う法的効果は一般的・抽象的なものではないとする。
また、換地処分等を受ければその取消訴訟を提起できるとしつつ、そこで事業計画の違法の主張が認められたとしても、事情判決がされる可能性が相当程度あり、権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難く、事業計画の適否の争いにつき「実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性がある」としている。

〔設問1〕(2)本件事業計画変更認可の違法性

・都市再開発法、都市計画法から手続的違法、実体的違法の問題提起→規範定立→あてはめ→結論。
(試験時間内に個別法から一連の流れを導き出せるのか?)

〔設問2〕本件事業計画変更認可の違法性の主張の可否(違法性の承継の可否)

・違法性の承継
:先行処分の出訴期間経過後に後続処分の違法性を争おうとする場合に当該後続処分の前提とされた先行処分の違法性を主張することができるか、という問題。

後続処分において先行処分の違法性を主張することが遮断されないとすると違法性が後続行為に承継され、先行処分の公定力が実質的に否定されてしまうために問題。

伝統的学説としては、「先行処分と後行処分とが相結合して一つの効果の実現をめざし、これを完成するものである場合」に特別の規定のない限り違法性の承継を認め、「先行処分と後行処分とが相互に関連を有するとはいえ、それぞれ別個の効果を目的とするものである場合」にはこれを否定する。

・違法性の承継(最判H21.12.17)Ⅰ-81
:実体法上の目的・効果の同一性基準に加え、先行行為につき取消訴訟の排他性を認めることが原告の手続保障の面で十分か、違法性の承継を認めることが原告の権利利益救済の実効性に照らして必要かという、手続法的観点を加味。

参考文献
:行政法〔第6版〕・櫻井敬子 橋本博之(弘文堂)
 行政判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第8版〕(有斐閣)
 司法試験の問題と解説2024・法学セミナー編集部(日本評論社)

田中洋平 について

大学で建築と法律を学びました。 大学卒業後は木造の戸建住宅やS造・RC造の事務所や福祉施設等の 様々な構造・用途の建築設計に携わりました。 また現在も、日々、建築と法律の勉強を続けています。 建築(モノ)と法律(ヒト)のプロフェッショナルとして 多様な知識・経験・考え方を通して、 依頼主が望み、満足し、価値を感じる、 一歩先の新たな価値観を提案します。
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