断熱材の種類

図面、特に詳細図を書いていると、断熱材の選定で迷うことが多い。断熱材を選定するにも、コスト面で有利か、断熱性能としてこの数値で等級を満たせるか、水に弱いものと強いもので使い分けはこの考えで良いか、防火等の認定を使う場合にこの断熱材で対応できるか、等。この春からは住宅でも省エネ申請が必須となったため、なおさらである。

種類が多くて毎回迷うので、断熱材の種類をまとめてみた。以下の通りである。


Ⅰ.繊維系断熱材
①グラスウール
:リサイクルガラスなどを溶かし、遠心力で繊維状にしたもの。
安価で施工性が高い。不燃性が高く、吸音性にも優れる。
(参考メーカー)旭ファイバーグラス㈱、パラマウント硝子工業㈱、等

(参考画像)アクリアネクストα(旭ファイバーグラス㈱)

②ロックウール
:玄武岩などの鉱物を高温で溶かして繊維状にしたもの。
グラスウールより耐熱性が高い。撥水性のある製品も多い。
グラスウールに比べると割高。
(参考メーカー)ニチアス㈱、㈱エーアンドエーマテリアル、等

(参考画像)MGボード(ニチアス㈱)


Ⅱ.発砲プラスチック系断熱材
①ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
:ポリスチレンのビーズを発泡させて作る。
「発泡スチロール」として知られる。
軽量で加工が容易。比較的安価。
(参考メーカー)アキレス㈱、㈱カネカ、等

(参考画像)アキレススチレンブロック(アキレス㈱)

②押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
:ポリスチレンを溶かし、発泡剤を加えて押出成形して作る。
EPSより硬く、吸水性が非常に低い。
基礎断熱や屋上断熱などにも使われる。
(参考メーカー)㈱カネカ、デュポン・スタイロ㈱、㈱JSP、等

(参考画像)カネライトフォーム(㈱カネカ)

③硬質ウレタンフォーム
:ポリイソシアネートとポリオールを反応させて作る。
発泡プラスチック系の中で特に断熱性能が高い。
板状の製品と、現場で吹き付けるタイプがある。
(参考メーカー)倉敷紡績㈱、アキレス㈱、㈱日本アクア(吹付)、等

(参考画像)クランボードP(倉敷紡績㈱)

④フェノールフォーム
:フェノール樹脂を発泡させて作る。
硬質ウレタンフォームと同等以上の高い断熱性能を持つ。
熱に強く、燃えにくいのが最大の特徴。
(参考メーカー)旭化成建材㈱、フクビ化学工業㈱、等

(参考画像)ネオマフォーム(旭化成建材㈱)

Ⅲ.その他の断熱材
①セルロースファイバー
:新聞古紙などの木質繊維をリサイクルして作る。
専門業者による吹込み工法で施工する。
高い断熱性に加え、吸放湿性や防音性、防虫効果(ホウ酸処理による)を持つ。
(参考メーカー)㈱兼久、大王製紙㈱、等

(参考画像)コンファイブ(㈱兼久)


②高性能断熱材(真空断熱材、等)
:グラスウールやシリカなどの芯材を真空状態にして断熱性能を極限まで高めたもの。
非常に薄くても高い断熱性能を発揮するが、高価。
冷蔵庫や特殊な建築部位などに使用される。
(参考メーカー)日本グラスファイバー工業㈱、小原化工㈱、等

(参考画像)真空断熱材(日本グラスファイバー工業㈱)

まとめてみたが、改めて種類の多さと性質の違いに驚いた。また、その他の内容として、施工性が良いかも検討内容となる。そして、最も大事なのは隙間なく断熱材を実際に施工できているかどうかである。その隙間から湿気を含んだ空気が入っていけばそこが結露し、どんなに断熱性能が高い断熱材を使っても意味がないことになる。

今後は断熱材の仕様と性能を検討しつつ、実際の断熱等級の計算も書類化していく必要があるので先が思いやられるが、一つずつ理解して快適な断熱環境を設定できるように、より理解を深めていきたいと思う。

田中洋平 について

大学で建築と法律を学びました。 大学卒業後は木造の戸建住宅やS造・RC造の事務所や福祉施設等の 様々な構造・用途の建築設計に携わりました。 また現在も、日々、建築と法律の勉強を続けています。 建築(モノ)と法律(ヒト)のプロフェッショナルとして 多様な知識・経験・考え方を通して、 依頼主が望み、満足し、価値を感じる、 一歩先の新たな価値観を提案します。
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