建設費の高騰

建設費が何しろ高い。最近はニュースで米の値上がりをひたすら報じていたが、建設費もそれに負けていない。感覚的には5年前の建設費の1.5倍の金額になっている。そのため、忙しく図面作成しているが、金額がネックで計画自体が前に進んでいない案件が出始めている。

どんな案件でも当初の予算通りで、かつ、要望を満たした建築計画、というのは難しい。どうしても建築主が要望する建築計画は予算を超えがちである。だが、そこで設計者の知恵を使って、同等のものでもコストを抑えた建材を選定する、使い勝手の考え方を変えることで施工面積を減らす、等の方法でコストを調整することは可能である。だが、昨今の物価高による建設費高騰はその設計者の努力のレベルを超える値上がり幅である。

また、物価は上がっているが、個人や会社に限らず、建築主の予算の余裕が減っていっている感覚もある。日本の年収の中央値は約400万。だが、これだけ建設費が上がり、かつ、地価も上がっているので、一般の人は自宅の建設も今後難しくなってくる。現に日本の大手のハウスメーカー等も軒並み、着工棟数は減り、売り上げも減っていっている。売上が上がっているのは海外に進出している会社ぐらいである。

人口が減り、物価が上がり、年収も据え置きとなると、建物を建てるという行為を希望する人の潜在数はあるとしても、実際に建設する人は確実に減っていく。

ただ、建築士の資格保有者数も現在約100万人程度いるが、これも減っていっている。しかも、令和4年時点で半数が60歳以上である。40歳台以下となると、全体の3割しかいない。

人口減、物価高、建設費高騰、建築士の減少、それら要素を考えても将来予測はぼんやりとは立てられるが、確実な予測は難しい。先々を考えれば考えるほど不安も増す。だが、あまり先々を考えて手を止めることもよくないことも分かっている。約10年、自分で設計事務所をやってきて思うのは、私一人でできることはかなり限られているものの、時代の流れやその時に周りにいる人に合わせて私自身の考え方や行動を微調整していくことが大切である。また、私の目標、建築と法律のプロフェッショナルになる、というものをぶれずに目指し続けることが結果的に時代の流れやその時に周りにいる人のためにもプラスに働くことになる予感がある。結局、私がすべきことは大きく変わることもないし変えようがないのだが、自身を微調整しながら前を向いて進んでいくしかない。

田中洋平 について

大学で建築と法律を学びました。 大学卒業後は木造の戸建住宅やS造・RC造の事務所や福祉施設等の 様々な構造・用途の建築設計に携わりました。 また現在も、日々、建築と法律の勉強を続けています。 建築(モノ)と法律(ヒト)のプロフェッショナルとして 多様な知識・経験・考え方を通して、 依頼主が望み、満足し、価値を感じる、 一歩先の新たな価値観を提案します。
カテゴリー: 建築 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です