〔設問1〕(1)本件解職勧告が取消訴訟の対象となる処分に該当するか否か
・取消訴訟の訴訟要件
①処分性、②原告適格、③訴えの利益、④被告適格、⑤管轄裁判所、⑥不服申立前置、⑦出訴期間
・「行政庁の処分」
:公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最判S39.10.29 Ⅱ-143)
・病院開設中止勧告(最判H17.7.15 Ⅱ-154)
:病院を開設しようとする者に対して、医療法に基づき都道府県知事が行う病院開設中止の勧告・病床数削減の勧告について医療法の仕組み上、勧告は行政指導にすぎないが勧告を受けた者がこれに従わない場合には、相当程度の確実さをもって健康保険法上の保険医療機関指定を受けられないという結果をもたらし実際上病院の開設を断念せざるを得ないことになり処分性を肯定
↓
①後続処分が相当程度の確実さをもって行われ、
②後続処分の効果が重大な場合には行政指導たる勧告であっても処分性を肯定
↓
本件解職勧告は②に該当するものの、①は当てはまらず事案が異なる
・行政手続法は不利益処分における意見陳述のための手続を処分が与える不利益の程度に応じて聴聞と弁明の機会の付与の2種類に分けて規定する。聴聞手続にはより手厚い手続的保障が与えられているが、弁明手続は聴聞手続と比べて略式の手続となっている。(行手法13Ⅰ①)
・聴聞手続
:行政庁による通知⇒主宰者の下での聴聞(審理)⇒行政庁による処分
口頭意見陳述権、証拠書類等提出権、文書閲覧請求権、等が認められる
・弁明手続
:行政庁による通知⇒弁明書・証拠書類等の提出⇒行政庁による処分(書面審理主義)
↓したがって、
本件解職勧告では聴聞よりも手続保障の程度が低い弁明の機会の付与しか定められておらず、やはり行政指導であって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものではなく、処分性は認められない
〔設問1〕(2)Dに原告適格が認められるか
・原告適格
:「法律上の利益を有する者」(9Ⅰ)について、「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう」とした上で、「当該処分を定めた行政法規が不特定多数の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめずそれが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は当該処分の取消訴訟における原告適格を有する(最大判H17.12.7 Ⅱ-159)
〔設問2〕(1)執行停止の要件である「重大な損害」(25Ⅱ)について
・行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為について民事保全法の定める仮処分をすることができない(44)
↓ただし、
執行不停止の原則(25Ⅰ)の例外として、
①処分の効力の停止、②処分の執行の停止、③手続の続行の停止、により執行停止を認める(25Ⅱ)
・執行停止の積極要件
①本案訴訟の係属
②重大な損害を避けるため緊急の必要がある時
第一次的考慮事項:損害の回復の困難の程度
第二次的考慮事項:損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質(25Ⅲ)
・執行停止の消極要件
①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき
②本案について理由がないとみえるとき
・参考判例
:弁護士懲戒処分の執行停止(最判H19.12.18 Ⅱ-192)
「社会的信用の低下、業務上の信頼関係の毀損等の損害」が「重大な損害」にあたるとして、執行停止を肯定
〔設問2〕(2)Aの違法事由の主張内容
・行政裁量
:法律が行政機関に独自の判断余地を与え、一定の活動の自由を認めている場合のこと
↓ただし、
裁判所は裁量処分について裁量権の逸脱・濫用があった場合にのみ取り消すことができる(30)
↓なぜなら、
裁量行為について裁判所の審査範囲が限定されるのは裁量が個々の問題ごとに実際に執行活動にあたる行政部門の方がより的確な対応ができるという立法者の判断に基づいて認められるものであり、したがって、裁判所も基本的には行政庁の判断を尊重するのが好ましいという考え方に依拠している
・裁量が問題となるステージ
①事実認定
②法律要件の解釈と認定事実のあてはめ(要件裁量)
③手続の選択
④行為の選択(効果裁量)(どの処分を行い、その処分をするかしないか)
⑤時の選択
・裁量審査の基準
:どのような場合に裁量権の逸脱・濫用があったといえるか
↓
・判断過程審査
:裁量処分にいたる行政庁の判断形成過程の合理性について審査する手法
・参考判例
:「基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当を欠くものと認められる場合」に裁量権の逸脱・濫用になる(都市計画と裁量審査-最判H18.11.2 Ⅰ-72)
参考文献
:行政法〔第6版〕・櫻井敬子 橋本博之(弘文堂)
行政判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第8版〕(有斐閣)
司法試験の問題と解説2023・法学セミナー編集部(日本評論社)