下地工事から仕上工事へ

現在工事中の案件は下地工事がおおよそ終わり、仕上工事へと進んでいる。来月には懸案だったガラススクリーン工事も始まり、工事は佳境へと進む。

この建物はロ準耐火建築物である。ロ準耐火建築物と聞いてもぴんと来ない人がほとんどだと思うが、一般的には鉄骨造のALC外壁の建物のことを指し、今回のように木造の建物でそれをすることは稀である。さらに、この建物は3階建ての住宅で、かつ、200㎡超のため、法的には竪穴区画が発生する。竪穴区画があるとその部分は防火設備で閉じる必要があり、非住宅なら一般的だが、住宅ではこれも稀なパターンである。そのため、結構な時間をかけていろいろと調べた結果、ほぼ木造の建物だがロ準耐火建築物にすれば竪穴区画を回避でき、またそのような建物も世の中に実際にあることが分かり、事前に構造設計者や確認検査機関にその旨を伝えて、後から大きな手戻りがないように下準備を入念に行った。

だが、蓋を開ければ構造設計者も確認検査機関もその特殊性をあまり具体的に認識しておらず、大きな手戻りが発生した。私自身は事前にそれが分かっていたからこそ、それを関係者に繰り返し伝えていたが、結局そのような状況を回避できなかったことが悔しい。

また、世の中に木造のロ準耐火建築物は実際に存在しており、その具体例も調べて理解した上で設計図を作成したが、結局、確認検査機関としてはそのやり方は認めない、ということで作業の手戻りも発生した上にコスト増になってしまった。その全ての経緯を建築主にも伝えたが、特に怒る訳でもなく嘆く訳でもなく、仕方がない、の一言で終わらせてもらったことに建築主へ感謝もしつつ、それ以上に申し訳なさで一杯だった。

ガラススクリーンと木造のロ準耐火建築物という特殊内容で時間と労力をかなり費やしたが、今、ようやくそれらの工事が始まろうとしている。経験則上、だからこそ、ではないが、現場はいたって順調である。

特殊なことはリスクも生じる。だからこそ、時間と労力をかけてそのリスクをできるだけ低減するようにするが、何事も絶対はない。だが、絶対に近づく努力は突き詰めなければならない。プロとして仕事をするなら、「努力はしました、頑張りました」では済まされない。結果でしか物事を語れない。図面を書き終えて何カ月も経ち、現場も今は順調に進んでいるが、ふとした時にガラススクリーンは無事施工できるのか、ロ準耐火建築物の納まりはあれで本当に問題なかったか、等が脳裏をよぎる。すべきことはやったのだから、あとは待つしかできないが、それでもまだできることがあるなら労を惜しまずに最善を尽くしたいと思う。

田中洋平 について

大学で建築と法律を学びました。 大学卒業後は木造の戸建住宅やS造・RC造の事務所や福祉施設等の 様々な構造・用途の建築設計に携わりました。 また現在も、日々、建築と法律の勉強を続けています。 建築(モノ)と法律(ヒト)のプロフェッショナルとして 多様な知識・経験・考え方を通して、 依頼主が望み、満足し、価値を感じる、 一歩先の新たな価値観を提案します。
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