〔設問1〕B社による相殺の可否について(A社:令和3年10月25日破産手続開始決定)
・相殺(民505Ⅰ)
:債権者と債務者との間に同種の債権債務が対立している状態にある場合には、その対等額について相殺を行うことができる
↓
破産手続開始前に破産債権と破産者に対する債務とが対立状態にある場合には、破産手続開始後も破産債権者が破産手続によらずに自由に相殺できる(67Ⅰ)
↕
・破産手続開始後の債務負担に基づく相殺は禁止(71Ⅰ①)
・破産手続開始後の債権取得に基づく相殺は禁止(72Ⅰ①)
↓
債権者の平等の原則に反する
・参考判例 三者間相殺の可否 最判H28.7.8 71
:再生債務者に対して、債務を負担する者が当該債務に係る債権を受働債権とし、自ら完全親会社と同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は、これをすることができる旨の合意があらかじめされていた場合であっても、民事再生法92条1項によりすることができる相殺に該当しない
↓
民事再生法92条1項の適用は「相互性」の欠如から否定され、また、あらかじめされていた再生手続に対する三者間相殺の合意の有効性についても否定(人のふんどしで相撲はとれない)
・参考判例 無委託保証人の事後求償権の破産債権該当性と相殺制限 最判H24.5.28 70
:無委託保証人が主たる債務者の破産手続開始前に締結した保証契約に基づき、同手続開始後に弁済をした場合において保証人が取得する求償権を自働債権とし、主たる債務者である破産者が保証人に対して有する債権を受働債権とする相殺は破産法72条1項1号の類推適用により許されないと解するのが相当
↓
相殺の担保的機能に対する期待と債権者の公平・平等の対峙
・(1)B社は令和3年11月1日、C社から債権②を譲り受け、当該債権を自動債権として相殺を主張している場合
↓
受動債権である債権①の債務者はB社であり、自働債権である債権②の債権者はC社であり、同じ主体が債務を負担しているのではなく、相互性を欠く
↓したがって、
B社による相殺の主張は認められない
・(2)A社の委託を受けて((3)受けないで)C社との間で債権②に係る債務を保証する旨の保証契約を締結し、同年11月1日、同契約に基づいてC社に全額の弁済をし、これにより生じた求償権を自働債権として相殺を主張している場合
↓
委託がある場合、B社には同契約に基づいてC社に全額を弁済したことにより生じた求償権を自働債権としてする相殺に合理的な期待があるものということができ、B社による相殺の主張は認められる
↓
委託を受けない場合、B社の求償権を自働債権とする相殺は、破産手続開始後に他人であるC社の債権を譲り受けて相殺適状を作出して、C社から譲り受けた債権を自働債権としてする相殺に類似しており、B社による相殺の主張は破産法72条1項1号の類推適用により許されない
〔設問2〕(1)E銀行が破産債権の届出をした本件貸金債権について、本件破産手続の最後配当の手続に参加するためにはどのような手続をとる必要があるか
・別除権(2Ⅸ)
:破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき、特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について65条1項の規定により行使することができる権利(破産財団から別のものとして除く権利)
↓
担保権実行後も残存する被担保債権がある場合(担保がオーバーローンの状態)には、その残額について破産債権者として権利を行使できる(108Ⅰ)
↓
別除権者が不足額について配当を受けるためには、届出期間内に別除権等の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権額、いわゆる予定不足額を届け出なければならない(111Ⅱ)
・別除権者が最後配当の手続に参加するためには、原則として、最後配当に関する除斥期間(198Ⅰ)内に、破産管財人に対し、当該別除権によって担保される債権の全部又は一部が破産手続開始後に担保されなくなったことを証明するか、当該担保権の行使によって弁済を受けることができない債権額(確定不足額)等を証明しなければならない(198Ⅲ)。担保目的物が実際に換価され受領した額を示すことにより確定不足額を証明する資料としては、担保権実行としての競売手続で換価された場合は、競売手続の配当表(民事執行法85)が任意売却により換価された場合は、売却の契約書・領収書が挙げられる。
↓したがって、
E銀行は最後配当の除斥期間内に確定不足額を証明する資料として、競売手続の配当表を破産管財人に提出する必要がある
参考文献
:倒産処理法入門〔第6版〕・山本和彦(有斐閣)
倒産判例百選〔第6版〕(有斐閣)
司法試験の問題と解説2022・法学セミナー編集部(日本評論社)